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ポスター鑑賞マニュアル(2)
「ヒロシマ・アピールズ」2009/浅葉克己
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「ヒロシマ・アピールズ」のシリーズで写真を使った作品は勝井さんの作品と今回の浅葉さんの作品だけです。浅葉さんはデザインの前に平和資料館に訪れ取材され、アイデアを練られて再度、撮影に訪れています。ポスターの完成を見ないまま逝かれたコピーライター眞木 準さんの「人類の時間はヒロシマの8時15分で止まっている。」から、被写体として選ばれたのは被爆した懐中時計。あの8時15分を針がさしたまま止まっている時計の遺品は他に多くあったのですが、針も文字盤もないこの時計を選ばれました。「8時15分を示す事さえもゆるされない、痛ましい、時計としての証は上部の竜頭のディテールのみ、でもこの時計はたしかに8月6日朝8時15分に人の営みと共に止まってしまった事を伝えるに十分な存在感」と言われました。
手の形は浅葉さんご自身がつけられました。資料館で見られ、衝撃を受けられた黒い雨の跡からインスピレーションをされたようです。上部の太い横線は“天”を表しています。それは、天から降る黒い雨なのか、苦しむ被爆者の痕跡なのか、天に召される方の手なのか、黒だとおどろおどろしくなるのですが、あまりにも美しいブルーが返って様々なイメージをかき立ててくれます。浅葉さんが指定されたこの青の再現に凸版印刷チームは、ずいぶん努力されたそうです。もちろん特色で練って数度重ねて刷っています。上部のHIROSHIMA・・・の英文もマットとグロスのスミを重ねて濃度を上げています。
この手の跡について、記者の問いに「楷書の手跡」と答えておられました。記者は最後まで理解できなかったようですが、浅葉さんは事務所に居られる際に、いつも楷書を書く鍛錬を欠かさないそうです。事務所で拝見しましたが、本当に美しい楷書です。何十年も楷書を書かれた手の型の事を仰っているんですね。深遠な漢字文化が宿った手の形で、メッセージを伝えたいと、浅葉さんは思われたそうです。でも別な言い方をしますと、何十年も卓球のラケットを握りつづけた手?かもですね。

8月12日(水)まで 中区袋町「まちづくり市民交流プラザ」北館4階ギャラリーにて、ヒロシマ平和ポスター展開催 ヒロシマ・アピールズ・ポスター12作品も公開中です。
by nohjima | 2009-08-08 23:08 | Nohjima
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